アトピー性皮膚炎
かゆみを伴う乾燥性の湿疹があり、特徴的な分布と慢性の経過から診断されます(乳児では2か月以上、その他は6か月以上)。
80~90%が乳児期(特に生後2~6ヶ月)に皮膚炎が出現しますが、乳児期発症のアトピー性皮膚炎は自然によくなる場合が多く、約半数では2~4歳までに治癒します。残りの半数は幼小児アトピー性皮膚炎に続いていきますが、幼小児のアトピー性皮膚炎も成長とともに治癒する傾向があり、約半数は思春期頃までに治癒します。残りは成人アトピー性皮膚炎へ移行し、成人では自然に治癒する確率は低くなります。
慢性の病気であり、すぐに治すことはできません。忍耐強く定期的に受診すること、自己流で治療をしないこと、ネットの情報をうのみにしないことも大切です。
治療
【基本方針】
- スキンケアを徹底する(保湿剤)
- 積極的に治療して、皮膚炎をなるべく早く抑える(ステロイドなどの抗炎症薬)
治療しないと、「皮膚炎が新しい皮膚炎を作る」悪循環が起こり、次第に悪化します。 - 皮膚炎の悪化原因があれば除去する
悪化原因を放置すると、皮膚炎の治療中にはよくなりますが、治療を止めるとすぐに再発・悪化します。
家庭で気をつけること
入浴
石けんやシャンプーをしっかり使用して汚れを洗い落としましょう。石けんが体に残っていると乾燥の原因になるので、洗い終わったらしっかりと流すことも大切です。
こまめな保湿で
「乾燥肌」を防ぎ、
「皮膚炎」を予防する
お風呂あがりや朝の着替え時を中心に、最低1日2回は、皮膚のカサカサした部分に保湿剤を塗布します。たっぷり使うのが大切です。しっかりした保湿ケアを行うことで、将来の食物アレルギーが減少することも分かっています。
「皮膚炎」ができれば
抗炎症薬(ステロイド
など)を使用する
「湿疹」の本体はお肌の炎症であり、保湿剤には炎症を抑える作用はないため、抗炎症薬(ステロイドなど)を使用します。かゆい⇒かく⇒皮膚が傷つく⇒かゆくなる⇒またかく、という悪循環を断ち切るために、早期に積極的に治療して皮膚炎を早くおさえることが重要です。ステロイドと聞くと、強い薬で副作用が心配と思われがちですが、適切に使用すれば副作用が問題になることはまずありません。しっかり塗って早く治し、治っても自己判断で中止せずに、相談しながらゆっくり減らしていくのがポイントです。
食物アレルギー
特定の食物を食べたとき、体がその食物を間違って敵と判断し、皮膚が赤くかゆくなったり、吐いたり、下痢をしたり、ゼーゼーと息苦しくなったり、まれに顔色が悪くなってショックを起こしたりすることがあります。このような症状が出ることを食物アレルギーといいます。
乳幼児期の原因食物は、卵、乳製品、小麦が多いですが、子どもの成長につれて治っていくことが多く、有病率は乳児(0歳児)で約10%、3歳児で約5%、学童期以降で1.3~2.6%と報告されています。
食物アレルギーは問診・病歴にもとづいた正しい診断が何より大切です。
診断
血液検査や皮膚テストで反応がみられても、食物アレルギーとは言えません。
- 実際に食べるのをやめると症状がよくなるか(除去試験)
- 原因と思われる食べ物を食べると症状が出るか(負荷試験)
などの試験をして、総合的に判断します。
血液検査などで反応があったからといって、“念のために除去する”ことはおすすめできません。必ず主治医の指示にしたがってください。
治療
治療の大原則は、「正しい診断に基づいた必要最小限の原因食物の除去」であり、除去の程度は患者さんごとの個別対応です。不必要に除去しすぎるのは望ましくありません。
アレルギー症状が出現したときは、抗アレルギー薬を使用します。皮膚症状に加えて、消化器症状(嘔吐、下痢)、呼吸器症状(ゼーゼー)、全身症状(顔色不良・意識低下など)など多臓器に症状が出た場合は、アナフィラキシーといって命に関わる危険があるため、すぐに救急車を呼んでください。
家庭で気をつけること
卵
卵は加熱したものと非加熱のもので、アレルギー症状を引き起こす強さが全く違います。
代わりになる食品:魚介類、肉類、豆腐、牛乳など
基本的に除去する必要のない食べ物:魚卵、鶏肉、卵殻カルシウム
乳製品
乳製品は加熱と非加熱で、アレルギー症状を引き起こす強さはあまり変わりません。
代わりになる食品:代用乳(ニューMA-1、ミルフィーなど)
基本的に除去する必要のない食べ物:牛肉、乳酸カルシウム、乳酸菌など
小麦
誤食によって重症なアレルギー反応(アナフィラキシー)を起こすことが多く注意が必要です。
基本的に除去する必要のない食べ物:しょうゆ、みそ
食物蛋白誘発胃腸症:FPIES
(新生児乳児消化管
アレルギー)
一般的な食物アレルギーと
食物蛋白誘発胃腸症(FPIES)
の違い
一般的な食物アレルギー | 食物蛋白誘発胃腸症 (FPIES) |
|
---|---|---|
症状 | 皮膚症状や呼吸器症状など | 消化器症状(嘔吐・下痢・血便)のみ |
症状出現時間 | 摂取2時間以内 | 摂取1~4時間後 |
主な原因 | 卵白、乳製品、小麦 | 卵黄、乳製品 |
摂取歴 | 初めての摂取で発症 | 複数回目の摂取で発症 |
血液検査 | 陽性が多い(反応あり) | 陰性が多い(反応なし) |
診断
血液検査や皮膚テストでは反応がみられず、症状から診断します。
- 原因物質を食べて1~4時間後に嘔吐(下痢・血便)があり、皮膚症状や呼吸器症状は認めない。
- 上記のエピソードを2回以上繰り返す。
- 嘔吐とともに、顔色が悪い・ぐったりしている、などの症状が出現することが多い。
- 断確定は、原因物質を食べてみて症状が出現するか確認する(経口負荷試験)。
治療
急性期
重症例では、点滴・ステロイド投与などを行う。
慢性期
一般的な食物アレルギーと比較すると、早期に耐性を獲得(食べれるようになる)することが多い。最後に症状が出てから1年後を目安に、耐性を獲得したか確認する(経口負荷試験)
家庭で気をつけること
卵
いったん、卵黄・卵白ともに除去し、卵黄が食べれるようになってから卵白摂取を開始するのが一
般的です。
代わりになる食品:魚介類、肉類、豆腐、牛乳など
基本的に除去する必要のない食べ物:魚卵、鶏肉、卵殻カルシウム
乳製品
代わりになる食品:代用乳(ニューMA-1、ミルフィーなど)
基本的に除去する必要のない食べ物:牛肉、乳酸カルシウム、乳酸菌など
気管支喘息
喘息の本体は、気管支の粘膜に起こる慢性的な炎症です。炎症が強くなることで、気管支が収縮して細くなったり、粘膜がむくんだり、分泌物が増えてしまった結果、空気の通り道が狭くなって呼吸が苦しくなる状態(息を吐くときにヒューヒュ―、ゼーゼー)が喘息発作です。
原因は大きく2つ
- かぜなどのウイルス感染(乳幼児に多い)
- ダニ、ハウスダスト、花粉、ペットなどに対するアレルギー(小学生以上に多い)
治療
発作を予防する治療
(吸入ステロイド、
飲み薬(シングレア、
キプレス、オノン
など))
喘息は発作予防が何より大切です。数か月から数年かかる治療ですが、自己判断で治療を中止せずに主治医と相談しながら根気よく頑張りましょう。
発作を落ち着かせる治療
(気管支拡張薬
(吸入または飲み薬)、
ステロイド)
薬で発作が落ち着いても、日中にかかりつけを受診しましょう。
家庭で気をつけること
- こまめな掃除、寝具のケア
- 室内の換気
- タバコの禁止
- ペットにアレルギーがあれば近づかない
- 規則正しい生活と適度な運動
こんなときはすぐに受診を
- ゼーゼーして息苦しいとき
- 咳がひどくて眠れない、哺乳ができない
- 発作止めを使用しても改善しない
喘息時の家庭での
対応について
アレルギー性鼻炎、花粉症
家のほこり(ハウスダスト:主成分はダニ)、スギなどの花粉、ペットの毛などが原因で、アレルギー症状を起こします。
①くしゃみ、②鼻水(透明でサラサラ)、③鼻づまり、が三大症状です。三大症状のほかに、頭痛、
頭重感、のど・目のかゆみなどが起こることもあります。これらの症状は非常に不快で日常生活の質を低下させ、学業や仕事に影響をきたすこともあります。
アレルギー性鼻炎には、花粉症など特定の季節に発症する「季節性アレルギー性鼻炎」と、ダニなどを原因として年間を通じて発症する「通年性アレルギー性鼻炎」があります。
かぜによる症状であれば、初期は透明の鼻水が次第に黄色くネバネバした鼻水に変わり、1~2週の経過で治っていくのが一般的です。透明でサラサラの鼻水やくしゃみが長期間持続する場合は、アレルギー性鼻炎を疑います。
アレルギー性鼻炎は発症の低年齢化が進み、今では幼児でもまれな疾患ではありません。また、アトピー性皮膚炎や食物アレルギーが自然に治っていく傾向があるのに対して、アレルギー性鼻炎の自然治癒はほとんどみられません。
診断は、三大症状の確認と、血液検査の結果などを総合的に判断します。
治療
-
アレルゲンの除去(下記「家庭できをつけること」を参照)
-
薬物療法
・抗アレルギー薬:アレルギーをおさえる飲み薬を使用します。
・ステロイド点鼻:ステロイドの点鼻薬を使用します。悪いときだけ使用しても効果は少ないので、毎日続けてください。 -
アレルゲン免疫療法・舌下免疫療法:スギやダニの成分を少しずつ体の中に入れて、体を慣らして治していきます。
家庭で気をつけること
アレルギーを起こす原因をできるだけ避けることが大切です。
- 家のほこりやペットの毛であれば、こまめに掃除をする、布団を干して掃除機をかける、ペットを避けるなどの対処が必要です。
- スギなどの花粉であれば、外出時はマスクやメガネをする、帰宅時に玄関で服についた花粉を振り落とす、うがいや洗顔をする、花粉が多いときには外に布団を干さないなどの対処が必要です。