感染性胃腸炎
ノロウイルス、アデノウイルス、ロタウイルスなどのウイルスが口から入り、感染しておこります。潜伏期(感染してから発病するまで)はおよそ1~3日です。突然吐き始め、嘔吐は半日から1日でおさまり、その後下痢になるのが典型的です。熱は出たり出なかったりします。通常は1週間くらいでよくなります。
子どもが突然吐いてしまったら、驚いて心配になられる保護者の方は多いと思います。子どもは、食べ過ぎたり、激しく泣いたり、咳き込んだりしたときにも吐いてしまうことがよくあります。発熱や腹痛、下痢などの症状があれば原因の多くは感染性胃腸炎です。「こんなときはすぐに受診を」の症状がないか気を付けながら、水分を少量頻回に与えましょう(下記参照)。
治療
- ウイルスが原因であり、抗菌薬は無効です。
- 脱水予防の水分摂取が重要ですが、吐いた直後に飲ませると嘔吐するので、嘔吐後2時間は水分も与えないようにしましょう(下記参照)。
家庭で気をつけること
水分補給
吐いたということは、胃の粘膜がむくんで吸収しないようにしている防御反応です。すぐに飲ませると、また吐くので、吐いた直後2時間くらいは水分も与えないようにしましょう。
2時間くらい嘔吐がなく吐き気が落ち着いたようなら、経口補水液や母乳(ミルク)を5~10分間隔で5~10mlずつ飲ませていきます(水やお茶しか与えないと低血糖になることがあるので、少しでもカロリーが入ったものにしましょう)。それでも3~4時間吐かなかったら自由に飲ませてください。水分がしっかり飲めるようになったら、消化に良い食べ物を少量から食べてみてください。
吐いたものの処理
100倍に薄めた塩素系漂白剤(水500mlに塩素系漂白剤5ml)を浸したペーパータオルできれいにふき取りましょう。
服についた時は、85℃以上の熱湯に2分以上ひたしてから洗濯します。処理した後は、流水と石鹸でしっかりと手洗いしてください。
こんなときはすぐに受診を
- 強い脱水症状がみられる
(泣いても涙が出ない、目がくぼんでいる、口の中や舌が乾いている、尿が12時間以上出ない、ぼ~っとしている) - 24時間以上吐き続けて、水分が摂れない
- 吐いたものが緑色のとき
-
お腹をひどく痛がるとき
- 血便が出たとき
便秘症
次のような症状があれば、便秘を疑います。
- うんちの回数が週に2回以下。
- コロコロした硬いうんちが出る。
- うんちの時に、強くいきんで痛がる。
- パンツにうんちがつく(便もれ)。
- 切れ痔や肛門スキンタグ(肛門粘膜の脱出)。
- 便に血がつく。
子どもの便秘の有病率(3~8歳)はおよそ15~20%と言われています。便秘を放置すると、便秘の悪循環につながり慢性化するので、適切な対処が必要です。
治療
- 便秘の悪循環を断ち切るには、まず直腸の貯留便(宿便)を排泄させることが一番大事であり、浣腸や座薬を使用して貯まった便を排泄させます。
- その次に、毎日排便する習慣をつけるために、便秘薬投与や食事療法を行います。
- 排便リズムが確立するには数年要することもあり、根気強くつきあうことがとても大切です。
家庭で気をつけること
排便習慣
- うんちをがまんさせないようにしましょう。
- 決まった時刻にトイレに座る習慣をつけましょう。最初は座るだけでもほめてあげましょう。
- トイレでは、足台を置くなどして前かがみにさせましょう。
生活習慣
- 朝ご飯をたべましょう。
- 食物繊維(イモ類、豆類、野菜、果物)をよく摂りましょう。野菜ジュースは効果がありません。
- 水分をしっかりとりましょう。
- 体をよく動かして遊びましょう。
こんなときはすぐに受診を
- お腹の痛みが強くて我慢ができないとき
- 嘔吐が続くとき
急性虫垂炎
腹痛は子どもによくみられる訴えの一つで、多くは胃腸炎や便秘など、あまり心配のないものですが、まれに手術などの積極的治療をしないと短時間で悪くなってしまう病気(急性腹症といいます)の場合があります。急性虫垂炎は小児の急性腹症で最も多い疾患です。
症状は発熱、腹痛、嘔吐などがみられますが、最も多い症状は腹痛です。みぞおちの痛みで始まり、次第に右下腹部に痛みが移動するのが特徴です。胃腸炎や便秘の痛みは周期的(ぜんどう痛)ですが、虫垂炎の痛みは持続痛です。歩いたりジャンプすると痛みが強くなるので、腰をかがめてゆっくり歩くのが特徴です。
放置すると虫垂の壁に穴が開いて、細菌のかたまり(膿)がお腹の中に広がってしまうので、適切な診断が重要です(血液検査、超音波、CT検査など)。
治療
虫垂炎の治療方法は大きく2通りあります。いずれも入院して治療が必要です。
- 抗生物質による治療
- 手術で虫垂を取り除く治療
こんなときはすぐに受診を
- みぞおちから始まって右下腹部に移動する腹痛
- おへその右下を触ると痛がるとき
腸重積症
腸重積症は、一本の長い管である腸管が、ある部分でめり込んで重なる状態になる腸の病気です。主に生後6か月から3歳くらいのお子さんにみられます。特に原因なく発症することが多いですが、ロタワクチン後、胃腸炎に続発、腸管に器質的異常(ポリープや憩室など)がある場合もあります。
症状は急激な腹痛(激痛)で始まります。お腹が痛いと言えないお子さんは機嫌が悪くなりますが、腹痛や不機嫌は間欠的(激痛と無症状を周期的に繰り返す)なのが特徴です。症状が進むと嘔吐や血便(イチゴゼリー状)も出現します。
症状から腸重積症を疑えば、超音波検査でほぼ100%診断できます。
治療
高圧浣腸といって、お尻から液を注入し、圧力をかけて腸管の重なりを元に戻します(高圧浣腸)。
高圧浣腸がうまくいかない場合、発症から一定時間経過した場合は手術が必要になる事があります。
こんなときはすぐに受診を
- 間欠的啼泣(激痛と無症状を周期的に繰り返す)がある
- 嘔吐が続く
- イチゴゼリーのような血便が出る
*腸重積は早期の治療が必要ですので、上のような症状がみられるときは、夜間や休日でもすぐに受診してください。