かぜ(急性上気道炎)
かぜは、鼻水、咳、発熱を主な症状とする急性上気道炎のことを言います(気管支炎や肺炎は下気道炎といって区別されます)。かぜの原因はほとんどがウイルス感染症によるもので、治療は休養と対症療法(症状を和らげる薬を使用しながら、自然に治るのを待つ)であり、薬を使ったら早く治るという訳ではありません。
鼻水や咳は、体の中に入った異物や病気の原因(病原体)を外に出そうとする防御反応です。したがって、無理に鼻水や咳を止める必要はありません。小さいお子さんで無理に咳を止めようとすると、痰をうまく出すことが出来ずに痰づまりや肺炎の原因になることもあり注意が必要です。一方、鼻水や咳がひどくて水分摂取ができない、咳込み嘔吐がある、夜眠れないなどの症状がある場合は、咳止めを使用して症状を和らげることも有効です(対症療法であり治療ではありません)。
発熱も、体温を上げることで病気の原因(病原体)を増やさないようにしたり、抵抗力を高めたりする防御反応です。そのため、39℃を超える高熱であっても、元気であれば、無理に熱を下げる必要はありません(熱が原因で脳に後遺症が出ることはまずありません)。高熱でぐったりして水分が摂れない、寝苦しいなど、ご家族から見てしんどそうであれば、適宜解熱剤を使用してかまいません(6時間以上間隔空けて)。
かぜの原因はほとんどがウイルス感染であり抗生剤は効きません。不要な抗生剤を使うと、正常な細菌叢を乱して下痢になったり、耐性菌が増えたりして問題になります。
家庭で気をつけること
服装
熱の上がり始め(手足が冷たい、寒気)は暖かめに、熱が上がりきったら(寒気が止まる、手足が暖かくなる、うっすら汗をかき始める)、少し薄着にさせて涼しくしてください。
解熱剤
服装を調節してみても、しんどそうにしている場合や、機嫌が悪い場合には、症状をやわらげるために、解熱剤を使用してもよいでしょう(6時間以上間隔空けて)。
解熱剤を使用しても、ほとんど下がらないことや、薬の効果が切れたらすぐに上がってくることも多いですが、それでも体が楽になればよいとお考え下さい。熱が少し下がったときに、水分摂取をしたり、眠らせて体力の回復を図るとよいでしょう。
こんなときはすぐに受診を
発熱
- 生後3か月未満の発熱
- 発熱が5日以上持続する
- 顔色が悪い
- 元気がなくぐったりしている
- 呼吸が苦しそう
鼻汁・咳
- 呼吸が苦しそうなとき
- ゼイゼイしているとき
- 咳がひどくて全く眠れない、
哺乳ができない、繰り返し嘔吐するとき - 3週間以上、咳がよくなっていかないとき
RSウイルス感染症
RSウイルスは1歳までに約半数、2歳までにほぼ100%が一度は感染する、かぜの原因となる代表的なウイルスです。鼻汁による接触感染や咳による飛沫感染で、感染力が非常に強いのが特徴です。
鼻汁、咳、発熱などの症状が5日前後でピークを越えますが、咳がおさまるまでには2~3週間かかります。
生後6か月未満の赤ちゃんや、早産時、心臓病のお子さんなどは重症になりやすい(細気管支炎、気管支炎、肺炎など)傾向があります。
大半は、普通の“かぜ”症状で終わりますが、ゼイゼイ、ヒューヒューする喘鳴や努力性呼吸(下記)があれば、病院受診が必要です。
治療
- RSウイルスに効く薬はありません(熱さまし、咳止めなどの対症療法を行います)。
- ゼイゼイが強い場合、酸素の値が下がっている場合、哺乳できない場合などは入院が必要です。
家庭で気をつけること
努力性呼吸の有無
ゼイゼイがある時にもっとも注意しなければいけないのは、努力性呼吸の有無です。努力性呼吸とは、
- 多呼吸(呼吸が速い)
- 陥没呼吸(息を吸うときにのどの下・肋骨の間・みぞおちなどがペコペコする)
- 起坐呼吸(横になると苦しい)
などです。努力性呼吸があれば、すぐに病院を受診してください。
加湿
乾燥していると、咳やゼイゼイが出やすくなります。
水分
母乳やミルクを飲みにくそうにしている時、咳き込み嘔吐がある時は、1回の量を少なくして、何回かに分けて飲ませましょう。
呼吸
息苦しそうなときは、背中をやさしくたたく、体を起こすように抱っこするなどしてあげてください。
こんなときはすぐに受診を
- 努力性呼吸(上記)がある
- ゼイゼイして呼吸が苦しそう
- 顔色が悪い
- 母乳やミルクの飲みが悪い(普段の半分以下)
幼稚園・保育園・学校
熱が下がって元気で、ゼイゼイなどがなく、食事をとれていれば、登園できます。
インフルエンザ
突然高熱が出て、のどの痛みや鼻水・咳、頭痛、筋肉痛もみられます。自然経過だと、熱は4~5日続くこと が多く、時に1週間程度かかることもあります。
発症後すぐに検査した場合(およそ12時間以内)は、インフルエンザであっても陰性と出ることがあります。そのため、家族が発症していて典型的な症状があれば、検査を行わないこともあります。
治療
発熱して48時間以内なら抗インフルエンザ薬(タミフル、イナビルなど)が有効です(発熱期間が1~2日短くなります)。
48時間以上たつと抗インフルエンザ薬は効果がありませんが、自然経過で治るため、心配ありません。
家庭で気をつけること
休む
家でゆっくり休んで体力の回復をはかるのが一番です。
水分
水分を十分にとらせてください。
食事
お子さんの好きなものでよいので、少しずつこまめに与えてください。
異常行動
インフルエンザにかかると、幻覚、錯乱、動き回るといった異常行動が見られる場合があるので、一人にしないようにしましょう。10分以上たっても続くときは病院を受診しましょう。
こんなときはすぐに受診を
- 高熱が7日以上続くとき
- ぐったりして水分がとれないとき
- 息苦しそうなとき
- 異常行動がみられるとき
- けいれんを起こしたとき
幼稚園・保育園・学校
発症後5日間(発熱した日を0日として)を経過し、かつ解熱した後2日(幼児は3日)を経過するまで出席停止です。
新型コロナウイルス感染症
新型コロナは、基礎疾患のない小児で重症化することは非常にまれであり、鼻水、咳、発熱を主な症状とするかぜ(急性上気道炎)と考えて差し支えありません。治療は休養と対症療法(症状を和らげる薬を使用しながら、自然に治るのを待つ)です。
鼻水や咳は、体の中に入った異物や病気の原因(病原体)を外に出そうとする防御反応です。したがって、無理に鼻水や咳を止める必要はありません。小さいお子さんで無理に咳を止めようとすると、痰をうまく出すことが出来ずに痰づまりや肺炎の原因になることもあり注意が必要です。一方、鼻水や咳がひどくて水分摂取ができない、咳込み嘔吐がある、夜眠れないなどの症状がある場合は、咳止めを使用して症状を和らげることも有効です(対症療法であり治療ではありません)。
発熱も、体温を上げることで病気の原因(病原体)を増やさないようにしたり、抵抗力を高めたりする防御反応です。そのため、39℃を超える高熱であっても、元気であれば、無理に説を下げる必要はありません(熱が原因で脳に後遺症が出ることはまずありません)。高熱でぐったりして水分が摂れない、寝苦しいなど、ご家族から見てしんどそうであれば、適宜解熱剤を使用してかまいません(6時間以上間隔空けて)。
新型コロナウイルスに抗生剤は効きません。不要な抗生剤を使うと、正常な細菌叢を乱して下痢になったり、耐性菌が増えたりして問題になります。
家庭で気をつけること
服装
熱の上がり始め(手足が冷たい、寒気)は暖かめに、熱が上がりきったら(寒気が止まる、手足が暖かくなる、うっすら汗をかき始める)、少し薄着にさせて涼しくしてください。
解熱剤
服装を調節してみても、しんどそうにしている場合や、機嫌が悪い場合には、症状をやわらげるために、解熱剤を使用してもよいでしょう(6時間以上間隔空けて)。
解熱剤を使用しても、ほとんど下がらないことや、薬の効果が切れたらすぐに上がってくることも多いですが、それでも体が楽になればよいとお考え下さい。熱が少し下がったときに、水分摂取をしたり、眠らせて体力の回復を図るとよいでしょう。
こんなときはすぐに受診を
- 生後3か月未満の発熱
- 発熱が5日以上持続する
- 顔色が悪い
- 元気がなくぐったりしている
- 呼吸が苦しそう
幼稚園・保育園・学校
発症後5日間(発熱した日を0日として)を経過し、かつ症状が軽快したあと1日を経過するまで出席停止です。
(症状が軽快とは、解熱剤を使用せずに解熱し、呼吸器症状が改善傾向にあること)
溶連菌感染症
溶連菌(A群β溶血性連鎖球菌)という細菌がのどに感染することで起こります。感染して2~4日後に、発熱とのどの痛みで発症します。手足や体に赤い小さな発疹が出たり、舌がイチゴの表面のようにぶつぶつになることがあります。小学生以上に多い病気で、3歳未満では典型的な症状が出ないことが多いです。
のどを綿棒でこすって検査する迅速検査で診断し、抗菌薬を飲めば1~2日で熱も下がり、のどの痛みも消失します。
治療
- 抗菌薬を10日間服用します。
- 抗菌薬を飲めば1~2日で熱も下がり、のどの痛みも消失します。
- 途中で薬をやめてしまうと、再発したり、リウマチ熱(心臓の合併症)や腎炎が起きやすくなるとも言われているので、指示通りに最後まで飲むことが大切です。
家庭で気をつけること
うつる
家族に同じような症状があれば(潜伏期間2~5日)、受診して検査を受けてください。
食事
口の中が痛いので食欲が低下します。熱いもの、辛いもの、酸っぱいものを避け、のどごしのよいもの(ヨーグルト、プリン、ゼリーなど)を食べさせてください。
腎炎
発症2~3週間後に、赤い尿、むくみ、尿が少ないなどの症状があれば病院を受診してください。
こんなときはすぐに受診を
- 抗生剤を飲んで2日しても熱が下がらない。
- のどの痛みが強く、水分をとらずにぐったりしている。
- 2~3週間後に、おしっこが少ない、むくんでいる、血尿がある(赤いおしっこ)などの症状が出てきたとき
幼稚園・保育園・学校
抗菌薬を飲みはじめてから24時間以上経過し、熱が下がっていれば、登園・登校できます。
アデノウイルス感染症
39~40℃の高熱ではじまり、熱が4~5日続きます。典型的な場合は扁桃炎を起こし、扁桃腺に白苔(白い膿)が付着します。軽い鼻水、咳も出ることが多いです。
のどを綿棒でこすって検査する迅速検査で診断します。
目にも感染しやすく、結膜炎(目の充血、めやに)のみであれば、「はやり目(流行性角結膜炎)」、発熱や扁桃炎を伴う場合は、「プール熱(咽頭結膜炎)」と呼ばれます。その他、胃腸炎や膀胱炎を起こすこともあります。
治療
- アデノウイルスに効く薬はありません(熱さまし、咳止めなどの対症療法を行います)。
- 結膜炎があるときには、目薬を処方することがあります。
家庭で気をつけること
発熱
4~5日間くらい高い熱が続きます。熱が長引くことは覚悟して、熱さましを上手に使ってのりきりましょう。
うつる
家族に同じような症状があれば(潜伏期間5~7日)、受診して検査を受けてください。
食事
口の中が痛いので食欲が低下します。熱いもの、辛いもの、酸っぱいものを避け、のどごしのよいもの(ヨーグルト、プリン、ゼリーなど)を食べさせてください。
こんなときはすぐに受診を
- 7日以上熱が続く。
- 水分をとらず、12時間以上おしっこが出ない。
- 元気がなく、ぐったりしている。
幼稚園・保育園・学校
流行性角結膜炎(はやり目)は感染のおそれがなくなるまで、咽頭結膜炎(プール熱)は熱が下がり結膜炎の症状が治まってから2日間、出席停止となります。
ヘルパンギーナ、手足口病
乳幼児を中心に流行する夏かぜの一つで、のどの奥に口内炎が複数できるのが特徴です。発熱と口内炎だけならヘルパンギーナ、手足にも発疹が出れば手足口病と呼ばれます。
手足口病は熱がない場合から高熱まで様々あり、ヘルパンギーナは高熱が3~4日続くことが多いです。
検査はなく、症状から診断します。
治療
- ヘルパンギーナ、手足口病に効く薬はありません(熱さましなどの対症療法を行います)。
- のどの痛みが強ければ、熱さましを痛み止めとして使用することもあります。
家庭で気をつけること
発熱
3~4日間くらい高い熱が続きます。熱が長引くことは覚悟して、熱さましを上手に使ってのりきりましょう。
水分
脱水にならないようにしっかり水分をとりましょう。のどが痛くて水分がとれない時は、本人が食べれるもの(少量の食事、スープ、ゼリーなど)を少量ずつ食べてください。
食事
口の中が痛いので食欲が低下します。熱いもの、辛いもの、酸っぱいものを避け、のどごしのよいもの(ヨーグルト、プリン、ゼリーなど)を食べさせてください。
感染予防
こまめに手洗いをして、タオルの共用はさけましょう。1か月くらいは便の中にウイルスが出ているので、排便後やおむつ交換後にはしっかり手洗いをしてください。
こんなときはすぐに受診を
- 5日以上熱がつづく。
- 水分をとらず、12時間以上おしっこが出ない。
- 元気がなく、ぐったりしている。
幼稚園・保育園・学校
熱が下がって食欲が改善すれば登園・登校可能です。
おたふくかぜ
おたふくかぜは、正式には流行性耳下腺炎と呼ばれ、5~10歳くらいの子どもに多い病気です。うつっても症状が出ない場合(不顕性感染)が30%程度あります。
① 潜伏期(感染してから発病するまで)が16~18日と長いです。
② 潜伏期を過ぎると、耳の下(耳下腺)が腫れて痛がります。
③ 両側の耳下腺が腫れることも、片方だけ腫れることもあります。あごの下(顎下腺)が腫れることもあります。
④ 腫れは約1週間で、熱は3~4日で落ち着きます。
*耳下腺の腫れを繰り返すお子さんもいて、これは反復性耳下腺炎という別の病気です。
治療
- おたふくかぜに効く薬はありません(熱さましなどの対症療法を行います)。
- 痛みが強ければ、熱さましを痛み止めとして使用することもあります。
家庭で気をつけること
発熱
3~4日間くらい高い熱が続きます。熱が長引くことは覚悟して、熱さましを上手に使ってのりきりましょう。
食事
食欲が低下します。熱いもの、辛いもの、酸っぱいものを避け、のどごしのよいもの(ヨーグルト、プリン、ゼリーなど)を食べさせてください。
合併症
髄膜炎、膵炎、精巣炎、難聴などがあります。頭痛が強く何度も吐くとき、睾丸を痛がるとき、耳の聞こえが気になる時は診察を受けてください。
こんなときはすぐに受診を
- 5日以上熱がつづく。
- 頭痛が強く何度も吐く。
- 元気がなく、ぐったりしている。
- お腹や睾丸を痛がる。
幼稚園・保育園・学校
耳下腺の腫れが出現してから5日間経過し、熱が下がって食欲も改善するまで出席停止です。
みずぼうそう
水痘ウイルスによって起こる伝染性の強い感染症です(空気感染します)。生後3か月くらいまではほとんどかからず、1~6歳に多い病気ですが、予防接種の定期接種化によって典型例は減少しています。
潜伏期(感染して発症するまで)は14~16日です。潜伏期を過ぎると全身に紅斑(赤いぶつぶつ)が出現し⇒水疱(水ぶくれ)⇒痂皮化(かさぶた)と変化し、様々な発疹が混在するのが特徴です。
熱はない場合から高熱(2~3日)までさまざまです。
治療
- みずぼうそうに対する抗ウイルス薬を服用します。
- 発疹には軟膏を使用します。
家庭で気をつけること
かゆみ
ひっかいてかきつぶさないように爪は短く切っておきましょう。
水分
脱水にならないようにしっかり水分をとりましょう。のどが痛くて水分がとれない時は、本人が食べれるもの(少量の食事、スープ、ゼリーなど)を少量ずつ食べてください。
食事
口の中に発疹できると痛いので食欲が低下します。熱いもの、辛いもの、酸っぱいものを避け、のどごしのよいもの(ヨーグルト、プリン、ゼリーなど)を食べさせてください。
入浴
ぬるめのお風呂やシャワーでさっと汗を流しておく方が、かゆみも少なく、化膿することも少ないです。石鹸やシャンプーは直接肌につけずに、よく泡立ててから、手でやさしく洗いましょう。
こんなときはすぐに受診を
- 5日以上熱がつづく。
- 発疹が赤く腫れて化膿したとき。
- 元気がなく、ぐったりしている。
*感染予防のため、症状があるうちは、受診方法を電話などで確認してから受診してください。
幼稚園・保育園・学校
すべての発疹が痂皮化(かさぶたになる)するまで出席停止です。
りんご病
正式には「伝染性紅斑」といいますが、ほほがりんごのように赤くなることから、りんご病と呼ばれていま す。幼児期から学童期に好発し、潜伏期間(感染して発症するまで)は4~14日です。
はじめのうちは微熱か軽いかぜのような症状で、この時期が他人にうつしやすい時期です。その後、両ほほに赤い発疹(紅斑)と手足にレースの網目のような紅斑が出現しますが、この時期には感染力はありません。
妊婦がりんご病にかかると、おなかの中の赤ちゃんに影響を及ぼすことがあるので注意が必要です。
治療
- りんご病に効く薬はありません。
- 発疹がかゆければ、かゆみ止めなどの対症療法を行います。
家庭で気をつけること
入浴
熱い風呂に長く入ると、赤みが強くなって長引くことがあるので、短時間で切り上げましょう。
運動
1~2か月は、運動したり日光にあたったりすると、赤みがぶりかえすことがあります。
食事
いつもどおりに食べてかまいません。
こんなときはすぐに受診を
- 高熱がつづく。
- かゆみが強くなったとき。
- 元気がなく、ぐったりしている。
幼稚園・保育園・学校
発疹(ほほが赤く)が出たときには人にうつる時期を過ぎているので、登園・登校可能です。
ヘルペス性歯肉口内炎
6か月から3歳くらいのこどもが「単純ヘルペスウイルス」に初めて感染したときに起こります。発熱に続き、はぐきが赤く腫れて出血しやすくなり、口内炎がたくさんできてとても痛がります。熱は4~5日でおさまりますが、口の中の痛みや腫れは1週間くらい続きます。
治療
- ヘルペスに対する抗ウイルス薬を使用します。
- 発熱やのどの痛みに対して、熱さましなどの対症療法を行います。
家庭で気をつけること
発熱
4~5日間くらい高い熱が続きます。熱が長引くことは覚悟して、熱さましを上手に使ってのりきりましょう。
水分
脱水にならないようにしっかり水分をとりましょう。のどが痛くて水分がとれない時は、本人が食べれるもの(少量の食事、スープ、ゼリーなど)を少量ずつ食べてください。
食事
口の中が痛いので食欲が低下します。熱いもの、辛いもの、酸っぱいものを避け、のどごしのよいもの(ヨーグルト、プリン、ゼリーなど)を食べさせてください。
こんなときはすぐに受診を
- 5日以上高熱がつづく。
- 水分をとらず、12時間以上おしっこが出ない。
- 元気がなく、ぐったりしている。
幼稚園・保育園・学校
熱が下がって食欲が改善すれば登園・登校可能です。
突発性発疹症
生後6か月から2歳ぐらいのお子さんが、ヒトヘルペスウイルス6型というウイルスに感染することで起こります。突然の高熱が3~4日続きますが、熱以外の症状に乏しいのが特徴です。熱が下がるとほぼ同時に発疹が出て、このときにはじめて診断がつきます。発疹は体や顔が中心で、手足にはあまり出ず、2~3日で消えていきます。
熱が下がってから機嫌が悪くなることが多いですが、数日で落ち着きます。
治療
- 突発性発疹症に効く薬はありません(熱さましなどの対症療法を行います)。
- 発疹にかゆみはないので塗り薬は必要ありません。
家庭で気をつけること
発熱
3~5日間くらい高い熱が続きます。熱が長引くことは覚悟して、熱さましを上手に使ってのりきりましょう。
水分
脱水にならないようにしっかり水分をとりましょう。のどが痛くて水分がとれない時は、本人が食べれるもの(少量の食事、スープ、ゼリーなど)を少量ずつ食べてください。
入浴
高い熱があるときや元気がない間は控えましょう。熱が下がった後は、発疹があっても入ってかまいません。
こんなときはすぐに受診を
- 7日以上高熱がつづく。
- 水分をとらず、12時間以上おしっこが出ない。
- 元気がなく、ぐったりしている。
- けいれんを起こしたとき
幼稚園・保育園・学校
熱が下がって食欲が改善すれば登園可能です。
ヒトメタニューモウイルス感染症
1歳から5歳ごろにかかりやすい、かぜの原因となる代表的なウイルスです。
鼻汁、咳、発熱などで発症し、熱は5日前後、咳がおさまるまでには2~3週間かかります。
大半は、普通の“かぜ”症状で終わりますが、ゼイゼイ、ヒューヒュする喘鳴や努力性呼吸(下記)があれば、病院受診が必要です。
治療
- ヒトメタニューモウイルスに効く薬はありません(熱さまし、咳止めなどの対症療法を行います)。
- ゼイゼイが強い場合、酸素の値が下がっている場合、哺乳できない場合などは入院が必要です。
家庭で気をつけること
努力性呼吸の有無
ゼイゼイがある時にもっとも注意しなければいけないのは、努力性呼吸の有無です。努力性呼吸とは、(1)多呼吸(呼吸が速い)、(2)陥没呼吸(息を吸うときにのどの下・肋骨の間・みぞおちなどがペコペコする)、(3)起坐呼吸(横になると苦しい)、などです。努力性呼吸があれば、すぐに病院を受診してください。
加湿
乾燥していると、咳やゼイゼイが出やすくなります。
水分
母乳やミルクを飲みにくそうにしている時、咳き込み嘔吐がある時は、1回の量を少なくして、何回かに分けて飲ませましょう。
呼吸
息苦しそうなときは、背中をやさしくたたく、体を起こすように抱っこするなどしてあげてください。
こんなときはすぐに受診を
- 努力性呼吸(上記)がある
- ゼイゼイして呼吸が苦しそう
- 顔色が悪い
- 母乳やミルクの飲みが悪い(普段の半分以下)
幼稚園・保育園・学校
熱が下がって元気で、ゼイゼイなどがなく、食事をとれていれば、登園できます。
マイコプラズマ感染症
肺炎マイコプラズマという細菌に感染することで、かぜや気管支炎、肺炎などを起こします。3歳くらいまでの小さなお子さんはかぜ症状で終わることが多いですが、小学生以上のお子さんがかかると肺炎を起こすことがよくあり、高熱(1週間前後)と長引く乾いた咳が特徴です。熱が下がった後も約3~4週間は咳が続きます。
肺炎のほかに、中耳炎、頭痛(髄膜脳炎)、胸痛、腹痛、発疹など多彩な症状が出ることもあります。
潜伏期間は2~3週間と長く、家族が2~3週間ごとに頑固な咳で発症する場合はマイコプラズマを疑います。
治療
- 一般細菌に使用する抗菌薬(ペニシリン系など)は効果がなく、マイコプラズマに有効な抗菌薬
(マクロライド系抗菌薬)を使いますが、苦みがありなかなか飲めない子もいます。 - ゼイゼイが強い場合、酸素の値が下がっている場合などは入院が必要です。
家庭で気をつけること
加湿
乾燥していると、咳やゼイゼイが出やすくなります。
呼吸
咳がひどくて息苦しそうなときは肺炎の可能性があるため、病院を受診しましょう。
感染予防
咳でうつるので、しっかり手洗いをしてマスクを着用しましょう。潜伏期間は2~3週間です。
2~3週間後に家族に似たような症状が出てきたら受診しましょう。
こんなときはすぐに受診を
- 高熱が1週間以上続く
- 咳こみが強くて息苦しそう
幼稚園・保育園・学校
熱が下がって咳も落ち着いてくれば、登園・登校できます。
百日咳
最初はふつうのかぜと変わりませんが、次第に咳が多くなり、顔を真っ赤にして激しくせき込むようになります。1~2週目がもっとも咳がひどく、3~4週目になると少しずつ軽くなってきますが、1か月以上咳が長引きます。
ワクチン未接種(または1回のみ)の乳児では、咳で息ができなくなったり、呼吸が止まったりすることがあるため入院が必要な危険な病気です。
ワクチンを接種(4種混合)していても、4,5歳から効果が落ちてきて、かかってしまうことがあります。ワクチンを接種しているため咳がひどくならないこともあり、診断は難しいことがあります。本人の症状は軽くても周りにうつしてしまうため、小さな兄弟がいる場合は注意が必要です。
治療
- 百日咳に有効な抗菌薬を処方します。
- ワクチン未接種(または1回のみ)の乳児では、咳で息ができなくなったり、呼吸が止まったりすることがあるため入院が必要です。
家庭で気をつけること
加湿
乾燥していると、咳やゼイゼイが出やすくなります。
呼吸
咳がひどくて息が止まりそうになるときは、病院を受診しましょう。
感染予防
咳でうつるので、しっかり手洗いをしてマスクを着用しましょう。
こんなときはすぐに受診を
- 咳がひどくて息が止まりそうになるとき
- 咳で何度も吐いて、元気がないとき
幼稚園・保育園・学校
特有の咳がなくなるか、有効な抗菌薬を5日間終了するまでは出席停止です。
血液検査の見方
血液検査で、体の中の炎症の強さを確認することが出来ます。子どもの発熱の原因はほとんどが感染症です(感染症以外の病気でよくみられるのは、川崎病です)。 感染症の原因が「ウイルス」か「細菌」かによって対処が違いますが、血液検査(白血球(WBC)とCRP)によって原因が「ウイルス」か「細菌」かを予測することができます。
細菌感染 | WBC>15000 | CRP>5 | 放置すると悪化 | 抗生剤が有効 |
---|---|---|---|---|
微妙 | 10000<WBC<15000 | 2<CRP<5 | ||
ウイルス感染 | WBC<10000 | CRP<2 | 自然に改善 | 抗生剤は無効 |
*川崎病は感染症ではありませんが、体の中の炎症は強いので、細菌感染と同じパターンになります。
上の表はあくまで目安であり、細菌感染でもWBCやCRPが低かったり(発症初期)、ウイルス感染でもWBCやCRPが高かったり(アデノウイルスなど)することもあります。
必要な対応
- ウイルス感染が疑われる場合は、抗生剤は無効で自然に改善するので、対症療法(症状をおさえる薬(解熱剤、咳止めなど)、水分摂取、睡眠)で経過観察します。
- 初期はウイルス感染であっても、遅れて細菌感染を併発することもあるので、熱がなかなか下がらない場合は、再度血液検査をすることもあります
- 細菌感染が疑われる場合は、原因検索(肺炎、中耳炎、尿路感染、菌血症など)と適切な抗生剤投与(状態によっては入院して点滴で)が必要です。